学力を上げるご褒美VS下げるご褒美
前回に引きつづき、ご褒美のあげ方についてです。
前回の記事では、次の5つの内、ご褒美をあげるタイミングはいつがベストかについてお伝えしました。
前回よりテストの点数があがったら・・・
①すぐにご褒美をあげる
②1ヶ月後にご褒美をあげる。
③トロフィーをあげる
④先にご褒美をあげる。前回より点数が上がらなかったらご褒美没収
⑤励ます。ご褒美はとくになし
答えと続きはこちら
「ご褒美のあげ方、間違ってない?「これができたら、ご褒美あげる」の落とし穴」
今回は、何にご褒美をあげると、こどもの学力が高まるのかお伝えします。
「ご褒美のあげかた?そんなもので本当に学力が高まるの?」と思いましたか?
いやいや、あなどるなかれ。
アメリカではご褒美のあげ方について、ハーバード大学のフライヤー教授の研究グループは9.4億円もの資金を使い約3万6千人もの子どもたち(小学2年生から中学3年生)を調査しました。
その結果、このご褒美のあげ方1つで、学力の伸び方が全く異なることが分かったのです。
では本題に参りましょう。
あなたは、次の2つの質問の内、学力が高まったのはどちらだと思いますか?
A:「次のテストで良い点をとったら◯◯を買ってあげる。」
B:「本を読んだら◯◯を買ってあげる。」
この問題は、テストという勉強の成果(アウトプット)か、読書という勉強の過程(インプット)のどちらにご褒美をあげると良いのかという問題です。
私たちが日常生活でよく使うのは、Aの成果型ご褒美ですよね。
成果にご褒美が約束されれば、
「ご褒美が欲しい!」
↓
「テストで良い点とらなきゃ」
↓
「勉強しなきゃ!」
と子どもが考え勉強するはずだ、と大人は考えるわけです。
しかし、実際に実験してみると結果はでした。
Bの「インプットに対するご褒美」をあげた子ども達の方が、テストの結果は良くなったのです。
AもBどちらの子どもたちも、やる気まんまんだったにも関わらず、です。
(実際の実験では、前回よりも良い成績をとることがご褒美の対象でした)
この違いは一体何の違いだったのでしょうか。
教育経済学者の中室牧子氏は、著書『「学力」の経済学』でこう言います。
「鍵は、子どもたちが「ご褒美」にどう反応し、行動したかということにありました。「インプット」にご褒美が与えられた場合、子どもたちにとって何をすべきか明確です。本を読み、宿題を終えれば良いわけです。一方、「アウトプット」にご褒美が与えられた場合、何をすべきか、具体的な方法は示されていません。」
つまり、子どもたちは、どれだけやる気があっても「良い点をとる」ために、具体的に何をすればよいのかイメージできないのです。
実際、実験後に子どもたちにアウトプットにご褒美を得るために何をしたら良いと思ったか?と質問したところ、ほとんど全員が「しっかり問題文を読む」「解答を見直す」といった、テスト当日のテスト対策を答えたのです。「勉強時間を増やす」「本を読む」「授業を聞く」といった、本質的な勉強方法の改善まで考えが至っていなかったのです。
教育ライターである僕の意見を付け加えると、勉強方法の改善が思いついたとしても、良い点数をとれるかどうかは試験の問題にもよりますし、頑張っても本当にとれるかどうか分かりません。しかし、本を読むことは自分が頑張れば確実にできること。本当にもらえるか分からないご褒美よりも、確実にご褒美をもらえる方がやる気は持続できるのではとも思います。
中室牧子氏は、続けてこう言います。
「ここから得られる極めて重要な教訓は、ご褒美は「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべき」だと。
つまり、もしあなたが、成績UPなどにご褒美をあげるを約束しているのであれば、その対象を読書や宿題などインプットに変えるとより早くその効果が体感できるということですね。
ただ、テストの点数などアウトプットにご褒美を与えてることが絶対ダメなわけでもありません。
アウトプットにご褒美を上げる場合は、子どもの学習の指導者や先輩が、どうすれば成績を上げられるのかその方法を教え導くと、学力が改善されることも検証されています。
つまり、親が子どもにアウトプットのご褒美を約束するときは、同時に「勉強のしかた」まで教える必要があるということです。
学力をあげるためには「何をすることが大切か」。それを教えてあげることが大事なんですね。
◎まとめ
・ご褒美はアウトプットよりもインプットにあげる方が、学力があがる
・ご褒美は、「本を読む」「宿題をする」というインプットにあげよう。
・「テストで良い点をとる」といった、アウトプットにご褒美をあげる場合は、具体的な勉強方法まで教えてあげよう
<参照>
『「学力」の経済学』(ディスカバー・トゥエンティワン 中室牧子著)
教育ライター秋田英明
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